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オウムガイは智慧の銀河で泳ぐ  ~黄金比はすべてを美しくするか?~ [つれづれ]

「宇宙物理学者」などと聞くと、ついつい自分の研究
対象以外には一切興味を示さず、カタブツで。。。
といったステレオタイプの人物像を想像してしまいがち
だが、あっさりと固定観念を覆された。

オーバーかも知れないが、「聡明」という言葉はこういう
人のためにあるのか、と思わせるような人が書いたのが
この本。


黄金比はすべてを美しくするか?―最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語










黄金比には常々興味があり、以前にも別の本を読んでみた
が、もう少し突っ込んで知りたい思いがあり、図書館で見つ
けたこの本を手にとってみた。

興味の対象は、「黄金比に基づく様々なプロポーションは
なぜ美しい(と言われている)のか?」ということで、何らか
の形で仕事に役立てばよいかと思ったのだが。。。
残念ながら、この本で明確な回答は得られなかった。

むしろこの本の著者は、いわゆる「黄金比伝説」に対して
予断を持つことなく、あくまで科学者としての客観的な態度
で向き合い、その真偽に迫っていく。
その検証の繰り返しは、執拗ともいえる程。

例えば、
一般的には美術史の定説とも言える、エジプトのピラミッド
やギリシャのパルテノン神殿の「黄金のプロポーション」説を
俎上に載せて、ひとつひとつ反論を行い、それらの多分に
恣意的な結論に大きな疑問符を突きつけている。

一方で著者は黄金比とフィボナッチ数との関係に触れた上で、
この神秘的な数字が自然界のいたるところに顔を出すことに
思いを巡らせる。
(葉序やヒマワリの種の配置、オウムガイの殻の螺旋構造、
 更には銀河の渦巻き状のパターン等々)

最終章で著者は「数」の神秘に思いをはせ、数学は「人間が
発明したものなのか」、はたまた「(神があらかじめ創ったもの
を)人間が発見したにすぎないのか」というかなり深遠なテーマ
に迫っていく。

その思索の範囲は、もはや科学者の領域を逸脱している。。。
ミクロからマクロへ。
部屋の観葉植物から天空の銀河へ。

著者の膨大な知識にいざなわれて、思わぬ知的体験ができた
(クサイ表現。。。)というのが正直な感想。
恥ずかしながら、こういう読書経験は初めてだった。



余談ではあるが。。。
「黄金比の歴史に対して影響を及ぼした」キーパーソンの
一人として、ダ・ヴィンチと同時代の人、ルカ・パチョーリが
数ページにわたって紹介されていた。

どこかで聞いたことがある名前だと思っていたら、複式簿記
を初めて書物で説明し「会計学の父」と称される旨、大学の
会計学の講義で習ったその人であった。

さて、確定申告の季節ももうすぐそこ。
現実に戻らなければ。





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