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もっと歯車を! ~アンティキテラ 古代ギリシャのコンピュータ~ [時計よもやま]

この機械を「オーパーツ」と呼ぶのは、少しばかり
傲慢だったと思う。。。

この本を読み終わった素直な感想である。


アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ









その精緻さから、これをとても考えられない(場違いな)
時代に存在したものと見做すのは、あくまで西洋の技術
史の文脈から見た話。

しかし実際には、紀元前にギリシャで花開いた天文学や
卓越した加工技術は、その後ペルシャを中心としたイスラ
ム圏に伝えられ、十字軍によって、再びヨーロッパに戻っ
てきた。

時計の歴史について書かれた書籍を見ると、ほとんどの
場合、機械式時計が発明された時期として、いきなり
13世紀頃の記述から始まる。
もちろんこの時期に最初の脱進器が発明されたと言われ
ており、事実として正しいと思う。
一方で紀元前から(ヨーロッパ以外の場所でも)それに
つながる技術や学問が脈々と続いていたことは、やはり
知っておくべきと思う。
(中国の水運儀象台もまた、しかり)

このことを認識できただけでも、この本を読んだ意味が
あったとさえ思えた。

多面的にものを見なければ、容易に判断を誤ることを肝に
銘じなければ、と改めて思う。

この本が取り上げるのは、以前の記事でも取り上げたが、
1901年に地中海の海底に沈む難破船から、偶然に発見
された「アンティキティラの機械」。

テクノロジーの発展と共に100年以上の時間をかけて、
少しずつこの機械の謎が解き明かされていく様子が、
「ネイチャー」等の一流科学誌で記者や編集者も勤めた
科学ジャーナリストによって丁寧に描写されていく。

一方でその謎に取り憑かれた者達の自己顕示欲やエゴ、
裏切り、そして落胆。。。
様々な人間模様が描かれる。

こういったドロドロ感は、この手の科学ノンフィクションには
欠かせない要素なのだろうか?
(以前読んだ「経度への挑戦」という本でもマリン・クロノ
メーターの開発に一生をかけたジョン・ハリソンとニュートン
らの天文学者とのつばぜり合いが印象的だった)

惜しむべきは、もう少し図版が充実していれば、更に
メカニズムの理解が深まるのにと思うこと。
文章でメカの説明をされても、正直イメージが湧きにくい。

このあたりの情報は、ネットで補完・確認しながら見ると
より一層この本を楽しめると思う。

ご参考までに、以下の動画はマイケル・ライト氏による
復元モデルの解説。
本書では、損な役回りを演じたとして同情的に描写され
ていて、読者も思わず感情移入するのでは?



アテネ国立考古学博物館にはまだまだ整理されていない
破片が残る可能性もあるらしいので、今後の新たな発見に
期待したい。

また、アラビア語で書かれたイスラム圏の文献の調査も
ほとんど行なわれていないようなので、更なる研究が進む
ことを願いたい。

なお裏面下段のダイヤルは、 太陽と月の食の予測する
ものだという。

折りしも、世間は明日(7月22日)の皆既日食の話題で
もちきり。

京都は約81%の部分日食。天気は如何に?






















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